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ムラナカ日記

内面への沈潜。

我、ウイスキーニ酔フ

結局彼女は自分には向いていなかったのだと、フラれてよかったのだと、この数日間、私は自分に言い聞かせてきた。それなのに、もう諦めたのだと思っていたのに、昨日数日ぶりに彼女に会ったとき、再び心が揺れ動いてしまった。

昨日は研究室内の数名が集まって、チョコレートフォンデュパーティーが開かれた。彼女は途中から参加してきた。資格試験があったそうである。無事に試験に合格した彼女は、いつもよりも嬉しそうだった。

はじめ私は彼女から離れたところに座っていたが、私がトイレに立ったときに場所がずれて、彼女の隣に座ることになった。

すでにワインでほろ酔いになっていた私に、彼女はウイスキーを注いでくれた。うれしかった。私は彼女の横顔を見た。彼女の嬉しそうな顔、黒目がちの瞳に、私は見入ってしまった。

彼女が立ち上がって机の向かい側に回ったとき、私はもう一度彼女の眼を見た。その瞬間、彼女と目が合った。私は思わず彼女から目をそらした。

帰り道、一人になった私はひとつの詩を口にした。届かぬ想いに、胸が締め付けられるような気がした。いつもより暖かい夜だった。

 

『うすあをい岩かげ』    北杜夫

 おのおともたえ

 ひかりもまだらに

 かぜもよどみきる

 みしらぬうすあをい岩かげに

 ひつそりといだきあひ

 ひとみにひとみを映しては

 とほい神話のなごりに酔ひ

 こころの寂しさに燃えたつては

 いたいけな息のほめきに

 ふと あらあらしく

 つつましいくちびるをうばひたい